「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第8回
佐怒賀直美先生



 こんにちは、佐怒賀家です。何とか年内に句会をと思っておりましたが、それぞれにそれぞれの都合もございまして、今回は、3年ほど前に遡りまして、2005年8月(季節が合わずに申し訳ありません)の句会の報告をさせて頂きます。
 毎年お盆の頃には、由美子の両親の実家のある新潟県関川村を訪れておりまして、家族句会が始まったのも、思い返せば2002年のこの夏の旅でありました。当時、琴美は中学2年生、筑美は小学5年生でした。その頃の句会もまた後程ご報告させて頂きたいと思います。
 さて、この年は、実に4日連続で句会を行っております。琴美は高校2年生、筑美は中学2年生です。
    

【2005年8月14日】
 雨なんど踊太鼓の続け様           直美(通称:おとう)
 盆荒れて大荒川を二度渡る
 湯の邑
(むら)の踊は雨となりにけり
 ワイパーのせつかちすぎて盆の雨
 雨粒の見ゆる大雨盆二日

 握り飯小さきもあり秋の旅          由美子(通称:ままい)
 ひとしきり降りて盆路細長く
 茄子の馬踏ん張つて立つ位牌の前
 霧まとふ山の足元父母の実家
(さと)

  ぶかぶかの時計腕にして初秋         琴美(通称:ねね)
 雨雲が秋の山々包み込み
 盆踊どんどこ雨雲追い出して
 初秋の朝日は山々切り抜いて
 白米に小さいじゃがいも積み上げて
 霧の海大きな山も水没寸前

 秋初め朝日のぼって旅に出る         筑美(通称:つう)
 秋の雨坂は波うち石魚
 雨の中草をわけわけかじか取り
 客人を帰さぬように秋の雨
 秋の夜たいこの音がなりひびく


           ○    
 
 直美選  ◎ひとしきり降りて盆路細長く          由美子
      ○握り飯小さきもあり秋の旅           由美子
      ◎初秋の朝日は山々切り抜いて          琴美
      ○ぶかぶかの時計腕にして初秋          琴美
      ○盆踊どんどこ雨雲追い出して          琴美
      ◎客人を帰さぬように秋の雨           筑美
      ○秋初め朝日のぼって旅に出る          筑美
 
 由美子選 ◎雨粒の見ゆる大雨盆二日            直美
      ○雨なんど踊太鼓の続け様            直美
      ○盆荒れて大荒川を二度渡る           直美
      ◎盆踊どんどこ雨雲追い出して          琴美
      ○ぶかぶかの時計腕にして初秋          琴美
      ◎秋初め朝日のぼって旅に出る          筑美
      ○雨の中草をわけわけかじか取り         筑美
      ○客人を帰さぬように秋の雨           筑美

 琴美選  ◎ワイパーのせつかちすぎて盆の雨        直美
      ○雨粒の見ゆる大雨盆二日            直美
      ◎霧まとふ山の足元父母の実家          由美子
      ○茄子の馬踏ん張つて立つ位牌の前        由美子
      ◎秋初め朝日のぼって旅に出る          筑美
      ○客人を帰さぬように秋の雨           筑美
   
 筑美選  ◎ワイパーのせつかちすぎて盆の雨        直美
      ○雨粒の見ゆる大雨盆二日            直美
      ◎霧まとふ山の足元父母の実家          由美子
      ○握り飯小さきもあり秋の旅           由美子
      ◎初秋の朝日は山々切り抜いて          琴美
      ○霧の海大きな山も水没寸前           琴美

   

【2005年8月15日】
 
 濁流となりて敗戦日の小川          直美(通称:おとう)
 頭
(ず)の芯に雨粒受けて敗戦日
 朱の橋の霞んで敗戦日の豪雨
 阿像吽像
(あぞううんぞう)大雨睨む敗戦日
 御手洗
(みたらい)の杓二つ伏せ敗戦日

 盆荒れの泥流右へ左へと           由美子(通称:ままい)
 碑文飛ばし読みして盆の雨強まる
 暗雲の切れる間ありや終戦日
 秋めくや観音までの急階段
 百日紅
(さるすべり)満開なれど紅(あか)なれど
 人待ちの椅子の固くて終戦日
 出入りする人眺めゐる終戦日

 里帰り横一線の雨の粒            琴美(通称:ねね)
 次々にガムふくらます秋の旅
 ハンガーにプールのにおいのタオルあり
 秋初めだらりとこぼるる歯みがき粉
 秋の雨滝なき山に滝つくり
 アブラゼミ雨で行き場を失って
 水中じゃんけんあいこ三回かさなって
 秋初め階段一気にかけあがる

 ダム開きかじかは今がふんばりどころ     筑美(通称:つう)
 トンネルを通れば変る秋の雨
 どしゃぶりのトンネル通れば霧模様
 雨に中霧の羽衣まとう山
 秋初め今日の天気はあまのじゃく
 秋初め観音像までかけ上がる
 手の中できのこを育てた観音像
 横泳ぎうまく浮けない秋初め


           ○

 直美選  ◎人待ちの椅子の固くて終戦日         由美子
      ○秋めくや観音までの急階段          由美子
      ◎水中じゃんけんあいこ三回かさなって      琴美
      ○里帰り横一線の雨の粒            琴美
      ○次々にガムふくらます秋の旅         琴美
      ○ハンガーにプールのにおいのタオルあり    琴美
      ◎秋初め観音像までかけ上がる         筑美
      ○ダム開きかじかは今がふんばりどころ     筑美
      ○トンネルを通れば変る秋の雨         筑美
      ○秋初め今日の天気はあまのじゃく       筑美
      
 由美子選 ◎阿像吽像大雨睨む敗戦日           直美
      ○頭の芯に雨粒受けて敗戦日          直美
      ◎里帰り横一線の雨の粒            琴美
      ○ハンガーにプールのにおいのタオルあり    琴美
      ○水中じゃんけんあいこ三回かさなって     琴美
      ◎秋初め観音像までかけ上がる         筑美
      ○ダム開きかじかは今がふんばりどころ     筑美
      ○雨に中霧の羽衣まとう山           筑美
      ○手の中できのこを育てた観音像        筑美
      
 琴美選  ◎御手洗の杓二つ伏せ敗戦日          直美
      ○朱の橋の霞んで敗戦日の豪雨         直美
      ◎人待ちの椅子の固くて終戦日          由美子
      ○暗雲の切れる間ありや終戦日         由美子
      ○秋めくや観音までの急階段          由美子
      ◎秋初め観音像までかけ上がる         筑美
      ○秋初め今日の天気はあまのじゃく       筑美
      ○手の中できのこを育てた観音像        筑美

 筑美選  ◎頭の芯に雨粒受けて敗戦日          直美
      ○御手洗の杓二つ伏せ敗戦日          直美
      ◎人待ちの椅子の固くて終戦日          由美子
      ○碑文飛ばし読みして盆の雨強まる       由美子
      ○秋めくや観音までの急階段          由美子
      ◎秋の雨滝なき山に滝つくり          琴美
      ○水中じゃんけんあいこ三回かさなって     琴美
      ○秋初め階段一気にかけあがる         琴美


  

【2005年8月16日】
 
 踝(くるぶし)ソックス脱げば丸まる送り盆    直美(通称:おとう)
 線香二本立てては盆の虻払ふ
 切株を跨ぎ新盆送りたる
 ハンバーガーのチーズはみ出て盆終る
 白昼の地震
(ない)秋雲のまん丸に

 早朝より蜩鳴いて旅二日           由美子(通称:ままい)
 道少し上り勾配墓詣で
 ひぐらしや一番奥が祖母の墓
 追伸二つ添へし絵葉書旅の朝
 血縁をたどりそこここ墓拝む
 かなかなや明日は必ず晴れると決め
 ともかくも話落ち着き西瓜食ふ

 秋初め父の右腕まくらにし          琴美(通称:ねね)
 初秋の靴下片方ぬぎすてて
 久方の秋晴れ山々吸い込んで
 ユーフォーキャッチャーアームへたりと秋初め
 秋初めからあげ口にほおばって
 すずめばちガラスつきぬけそうになり
 おくり盆右も左も山つづき
 玩具店探し歩いて盆おくる

 秋初め次のお店を検索中           筑美(通称:つう)
 力技ピンも宙舞う秋初め
 今日は晴天明日はカジカが取れるかも
 夕ご飯なにか足りない盆終り
 盆送り未練の残るゲームセンター


 
          ○

 直美選  ◎ひぐらしや一番奥が祖母の墓          由美子
      ○ともかくも話落ち着き西瓜食ふ        由美子
      ◎初秋の靴下片方ぬぎすてて          琴美
      ○秋初め父の右腕まくらにし          琴美
      ○すずめばちガラスつきぬけそうになり     琴美
      ○おくり盆右も左も山つづき          琴美
      ◎秋初め次のお店を検索中           筑美
      ○夕ご飯なにか足りない盆終り         筑美
      
 由美子選 ◎線香二本立てては盆の虻払ふ         直美
      ○切株を跨ぎ新盆送りたる           直美  
      ○白昼の地震秋雲のまん丸に          直美
      ◎秋初め父の右腕まくらにし          琴美
      ○すずめばちガラスつきぬけそうになり     琴美
      ○おくり盆右も左も山つづき          琴美
      ◎秋初め次のお店を検索中           筑美
      ○今日は晴天明日はカジカが取れるかも     筑美 

 琴美選  ◎切株を跨ぎ新盆送りたる           直美
      ○線香二本立てては盆の虻払ふ         直美
      ◎ひぐらしや一番奥が祖母の墓          由美子
      〇早朝より蜩鳴いて旅二日           由美子
      ◎今日は晴天明日はカジカが取れるかも     筑美
      〇力技ピンも宙舞う秋初め           筑美

 筑美選  ◎切株を跨ぎ新盆送りたる           直美
      〇ハンバーガーのチーズはみ出て盆終る     直美
      ◎ひぐらしや一番奥が祖母の墓          由美子
      〇早朝より蜩鳴いて旅二日           由美子
      ◎秋初め父の右腕まくらにし          琴美
      ◎ユーフォーキャッチャーアームへたりと秋初め 琴美

  

【2005年8月17日】
 
 ミーと鳴く子鹿に秋の草ちぎる        直美(通称:おとう)
 荒れ川の裏側見せて盆過ぎる
 つと行つて帰つて鬼やんまの孤高
 盆過ぎの線香斜交ひ
(はすかい)より立てる
 朝早の川原のつぺりして初秋
 でがらし茶三口で飲んで秋の宿

 日が弱く射して鰍
(かじか)の潜みをる     由美子(通称:ままい)
 素通りの地蔵の道に萩こぼる
 光りをりそのひと群の川芒
 ざあざあざあ石と鰍と光と風
 生け捕りの鰍二匹が顔寄する
 秋光やあまねく新しき一日

 激流に口半開きのかじかいて         琴美(通称:ねね)
 鹿鳴いて今日はうたたねしたい気分
 おにやんま山の空気を切りさいて
 偏頭痛だましだましの秋の旅
 盆過ぎのポットのロック解除する
 秋の旅テーマソングは永遠と
 ぬかるみにはまった鹿の息荒く

 びっしりと秋の雲並ぶグーチョキパー     筑美(通称:つう)
 ゲームセンターコインじゃらりと落ちる秋
 水遊び川の流れに逆らって
 ふしゅふしゅとシカの鼻息エサ飛ばす
 盆過ぎのちりぢりにつく線香の火
 ゆうゆうと川の上飛ぶ秋のとび


   

           ○

 直美選  ◎素通りの地蔵の道に萩こぼる          由美子
      ○日が弱く射して鰍の潜みをる         由美子
      〇生け捕りの鰍二匹が顔寄する         由美子
      ◎盆過ぎのポットのロック解除する       琴美
      ○激流に口半開きのかじかいて         琴美
      ○鹿鳴いて今日はうたたねしたい気分      琴美
      ◎盆過ぎのちりぢりにつく線香の火       筑美
      ○ふしゅふしゅとシカの鼻息エサ飛ばす     筑美
      〇ゆうゆうと川の上飛ぶ秋のとび        筑美
      
 由美子選 ◎盆過ぎの線香斜交ひより立てる        直美
      ○ミーと鳴く子鹿に秋の草ちぎる        直美  
      ○朝早の川原のつぺりして初秋         直美
      ◎盆過ぎのポットのロック解除する       琴美
      ○激流に口半開きのかじかいて         琴美
      ○鹿鳴いて今日はうたたねしたい気分      琴美
      〇偏頭痛だましだましの秋の旅         琴美
      ◎ふしゅふしゅとシカの鼻息エサ飛ばす     筑美
      〇びっしりと秋の雲並ぶグーチョキパー     筑美
      〇ゲームセンターコインじゃらりと落ちる秋   筑美

 琴美選  ◎盆過ぎの線香斜交ひより立てる        直美
      ○ミーと鳴く子鹿に秋の草ちぎる        直美  
      ○朝早の川原のつぺりして初秋         直美  
      ◎日が弱く射して鰍の潜みをる         由美子
      〇素通りの地蔵の道に萩こぼる          由美子
      〇ざあざあざあ石と鰍と光と風         由美子
      ◎盆過ぎのちりぢりにつく線香の火       筑美
      ○ふしゅふしゅとシカの鼻息エサ飛ばす     筑美

 筑美選  ◎でがらし茶三口で飲んで秋の宿        直美
      ○ミーと鳴く子鹿に秋の草ちぎる        直美
      ○盆過ぎの線香斜交ひより立てる        直美
      ○朝早の川原のつぺりして初秋         直美
      ◎生け捕りの鰍二匹が顔寄する         由美子
      〇素通りの地蔵の道に萩こぼる          由美子
      ◎おにやんま山の空気を切りさいて       琴美
      〇偏頭痛だましだましの秋の旅         琴美
      ○秋の旅テーマソングは永遠と         琴美

 とまあ、こんな感じで……。もちろんそれぞれの句を批評し合ったわけでして、それにしてもよく四日も続けてやったものだと、今更ながら子供達の頑張りに感心してしまいます。

 これにて本年の「絆」は終了です。1年間ありがとうございました。また一月にお会いいたしましょう。その時には、「新年句会」または「忘年句会」のご報告ができますよう、頑張って句会を開きたいと思っております。それでは、良いお年をお迎えください。

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