「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第11回

2007年8月14〜17日 場所 新潟・山形



 こんにちは、佐怒賀家です。3月末に退職した私は、まだまだ何かと落ち着かない日々を過ごしております。4月より大学生となり下宿を始めた琴美は、ようやくペースがつかめたようではありますが、そんなこんなで、その後なかなか句会が開けませんので、今回は、一昨年夏の新潟・山形の旅での句会の報告をさせて頂きます。
 2007年の夏は、高校生となった筑美は部活動(サッカー部)の練習のため時間が取れず、浪人中で時間のたっぷりとある(?)琴美と3人での、8月14日から18日までの4泊5日の旅でありました。

 8月14日(火)、朝、新潟県へ向かって出発。途中、福島県を経由し「檜原湖」に沿って北上、関川村湯沢温泉の定宿「角屋旅館」には陽の高いうちに到着。休憩後、親戚周り。夜、1回目の句会。
 15日(水)、昼間は昼食をはさんでのんびりと近くの川で恒例の「鰍捕り」。夜は旅館前広場で行われた「湯沢温泉盆踊大会」に参加。
 16日(木)、朝食後、昨日分の句をもとに2回目の句会。休憩後は、「鰍捕り」および豪農の館「渡辺邸」見学。夕方、盆送り。夜3回目の句会。
 17日(金)、親戚周りの後、朝のうちに山形へと出発。即身仏で有名な湯殿山麓の「大日坊」を見学。宿泊は月山志津温泉。夜4回目の句会。
 18日(土)、途中「山寺」へ立ち寄り、夕刻に自宅到着。

 
以上旅行中に実施した4回分の句会結果をご報告いたします。

[14日]

 中州まつ白残暑の橋を渡りては
 秋暑し(うみ)の形に湖光り
 峠てつぺん(あぶ)の平たく飛ぶ残暑          直美(通称:おとう)

 雲めがけ急カーブして風は秋
 見晴らし台の看板朽ちて秋はじめ
 新涼のみづうみの色森の色
 風なくて湖畔に残る貸ボート
 温泉街過ぎて出くはす鬼やんま          由美子(通称:ままい)

 三人になりて今年の夏旅行
 峠越え初秋の空に吸い込まれ
 巨大独楽回るを見上げ秋初め
 木のおもちゃかたかた落ちて残暑かな       琴美(通称:ねね)

    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎温泉街過ぎて出くはす鬼やんま     由美子
       ○新涼のみづうみの色森の色       由美子
       ◎木のおもちゃかたかた落ちて残暑かな   琴美
       ○峠越え初秋の空に吸い込まれ       琴美

  由美子選 ◎中州まつ白残暑の橋を渡りては      直美
       ○秋暑し湖の形に湖光り          直美
       ◎木のおもちゃかたかた落ちて残暑かな   琴美
       ○峠越え初秋の空に吸い込まれ       琴美

  琴美選  ◎秋暑し湖の形に湖光り          直美
       ○中州まつ白残暑の橋を渡りては      直美
       ◎雲めがけ急カーブして風は秋      由美子
       ○新涼のみづうみの色森の色       由美子


[15日] 

 三度まはつて抜ける湯街の盆踊
 盆三日今日の予定は今日立てる
 (かじか)の尾石を叩いて逃走す
 やはらかにくねり鰍の焼かれたる            直美

 ずん胴の水筒洗ふ終戦日
 国道に合流猛暑続く気配
 秋めくや瀬音の中の父娘(おやこ)撮る
 水鏡初秋の川に横向けて
 水鏡の切り取る川底には鰍              由美子

 シップ二枚の父の腰見る秋の暮
 のっそりの車に秋の陽のっかって 
 小さな犬は交互にほえて秋の夕
 赤い左目かじか方向転換す               琴美



 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎ずん胴の水筒洗ふ終戦日        由美子
       ○秋めくや瀬音の中の父娘撮る      由美子
       ○水鏡の切り取る川底には鰍       由美子
       ○小さな犬は交互にほえて秋の夕      琴美
       ○赤い左目かじか方向転換す        琴美

  由美子選 ◎盆三日今日の予定は今日立てる      直美
       ○鰍の尾石を叩いて逃走す         直美
       ○のっそりの車に秋の陽のっかって     琴美
       ○赤い左目かじか方向転換す        琴美

  琴美選  ◎鰍の尾石を叩いて逃走す         直美
       ◎ずん胴の水筒洗ふ終戦日        由美子
       ○秋めくや瀬音の中の父娘撮る      由美子

    

[16日] 

 川底の(かげ)と鰍を掬ひけり
 屋根に石乗せて残暑の大庄屋
 百日紅(さるすべり)咲かせ米蔵空つぽに
 味噌蔵の天井低き残暑かな
 土間百畳風突ん抜けて盆の村              直美

 網に絡まる鰍小振りは逃がしてやる
 鰍逃げて小石ふはりと動きけり
 秋の川石に触るれば曇りけり
 捕はれの鰍四隅に潜みゐる
 豪農の屋敷空蝉(うつせみ)列なせり
 豪農の味噌蔵高窓より秋光              由美子

 かじかの親分足の間にぽっといて
 風は秋ちょうちょのように葉は落ちて 
 糸とんぼ川の光を(はね)に受け 
 鬼やんま胸張り方向転換す
 はっかの駄菓子いやいや手にするお父さん
 初挑戦の糸かぼちゃの味ごまの味            琴美


    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎豪農の味噌蔵高窓より秋光       由美子
       ○秋の川石に触るれば曇りけり      由美子
       ◎糸とんぼ川の光を翅に受け        琴美
       ○鬼やんま胸張り方向転換す        琴美

  由美子選 ◎土間百畳風突ん抜けて盆の村       直美
       ○川底の光と鰍を掬ひけり         直美
       ○百日紅咲かせ米蔵空つぽに        直美
       ◎糸とんぼ川の光を翅に受け        琴美
       ○鬼やんま胸張り方向転換す        琴美

  琴美選  ◎川底の光と鰍を掬ひけり         直美
       ○屋根に石乗せて残暑の大庄屋       直美
       ○土間百畳風突ん抜けて盆の村       直美
       ◎秋の川石に触るれば曇りけり      由美子
       ○豪農の味噌蔵高窓より秋光       由美子


[17日] 

 大幣(おおぬさ)の風ばさと来て涼新た
 稲は穂即身仏の寺()さし
 新涼の即身仏が指垂らす
 ま向かへば秋の即身仏笑まふ
 即身仏の眼孔深く秋めけり
 即身仏の寺出て秋雨の小降り              直美

 ここよりは霊山霧雨肩に受け
 稲の道細く即身仏の寺
 新涼の即身仏に真向かへり
 不動明王剣呑む気迫山の秋
 秋雨の音聴く即身仏の寺
 風神の鼻反り上がり秋の雨              由美子

 黒き蝶秋の豪雨にはばたきて
 秋雨の即身仏の寺に立つ 
 秋の宿鍵にこけしの下がりたる
 昼抜きの今日は霧の中を行く              琴美


    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ○ここよりは霊山霧雨肩に受け      由美子
       ○不動明王剣呑む気迫山の秋       由美子
       ○風神の鼻反り上がり秋の雨       由美子
       ◎秋の宿鍵にこけしの下がりたる      琴美
       ○秋雨の即身仏の寺に立つ         琴美

  由美子選 ◎大幣の風ばさと来て涼新た        直美
       ○即身仏の眼孔深く秋めけり        直美
       ◎秋雨の即身仏の寺に立つ         琴美
       ○秋の宿鍵にこけしの下がりたる      琴美

  琴美選  ◎即身仏の眼孔深く秋めけり        直美
       ○大幣の風ばさと来て涼新た        直美
       ◎風神の鼻反り上がり秋の雨       由美子
       ○不動明王剣呑む気迫山の秋       由美子


 毎回、選句の後にはそれぞれの句について3人で意見交換をしましたが、当時の記録が残っておりませんので、残念ながらその様子をお伝えすることができません。今までの家族句会の様子を参考に、ご想像いただければ幸いです。

 次回は何とか4人揃っての句会の様子をお届けしたいと思います。
 それではまた。

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