「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第12回

実施日 2002年8月11〜15日 場所 新潟(含む佐渡)




 こんにちは、佐怒賀家です。またまただいぶご無沙汰してしまいましたが、暑さの厳しい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。不定期の連載ということで始めましたものの、琴美の大学進学に伴う下宿と、筑美の相変わらずの休みなき部活動とで、なかなか家族句会が開けず、ずるずると時間ばかりが過ぎ、大変申し訳なく思っておりましたが、そんな折、暑さに負けず部屋の整理をし始めたところ、貴重な(?)資料が見つかりました。
 どこかにはあるはずと探しておりました、記念すべき
第1回の家族句会(2002年)の記録が、2003年・2004年・2006年分と一緒に出てきたのです。 そこで、今回は、その第1回家族句会の様子をご報告させていただきます。

 2002年の夏は、琴美は中学2年生、筑美は小学5年生でした。旅の行程は次の通りです。

 8月11日、新潟へ向かって出発。新潟市内の水族館「マリンピア日本海」に寄り、由美子の両親の実家のある関川村へ。   12日、13日は関川村に滞在。
   14日、新潟港より佐渡へ渡り、16日、新潟港を経て自宅へ戻る。

 以上の旅行中に実施した5回分の句会結果をご報告いたします。

[11日]

 トンネル十個抜けて残暑にぶち当たる
 マンボウの口まん丸き残暑かな
 海馬(トド)吠ゆる天に暑さを残しては
 岩を跳ぶペンギン残暑はね返し
 残暑てふ(ちょう)胸にはりつくラッコの手      直美(通称:おとう)

 思ひ出せぬ去年の自分雲の峰
 マンボウの方向転換夏休み
 回遊魚じつと見てをり夏が逝く
 みづくらげ流されてゐる流れてゐる
 キラキラとかたくちいわしまは      由美子(通称:ままい)

 暑さなど忘れてしまうエイの顔       琴美(通称:ねね)

 マンボウの暑さをかたるうごきかな     筑美(通称:つう)

    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎みづくらげ流されてゐる流れてゐる    由美子
       ○回遊魚じつと見てをり夏が逝く      由美子
       ○暑さなど忘れてしまうエイの顔       琴美
       ○マンボウの暑さをかたるうごきかな      筑美

  由美子選 ◎海馬吠ゆる天に暑さを残しては       直美
       ○残暑てふ胸にはりつくラッコの手      直美
       ◎暑さなど忘れてしまうエイの顔       琴美
       ◎マンボウの暑さをかたるうごきかな      筑美

  琴美選  ◎マンボウの口まん丸き残暑かな       直美
       ○残暑てふ胸にはりつくラッコの手      直美
       ◎マンボウの方向転換夏休み        由美子
       ○キラキラとかたくちいわしまはれ右    由美子
 
  筑美選  ◎海馬吠ゆる天に暑さを残しては       直美
       ◎岩を跳ぶペンギン残暑はね返し       直美
       ◎マンボウの方向転換夏休み        由美子
       ○みづくらげ流されてゐる流れてゐる    由美子


[12日] 

 祖母の指爪より細き秋暑かな
 秋の雷肩尖りたる祖母とゐて
 荒れ川となれば秋雲縦長に
 秋扇たためば一気の雨雲
 雨来るか滅多矢鱈に虻飛んで             直美

 祖母と手をつないでゐたり秋の雷
 雷去つて誰彼となく居間にをる
 水鏡乾けば暮るる母の実家(さと)
 生温き水着を仕舞ふ更衣室
 たのもしき肩の日焼けの定着す           由美子

 まちわびたかじかとり夏の雨に消え
 塩素のにおい鼻に残って残暑かな 
 夏過ぎてうきわしずかにただよって          琴美

 川の中暑さをわすれるかじかとり
 かじかとりかじかとともに流れてる
 川を見にだくりゅうすごさにぼうぜんと        筑美



 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎水鏡乾けば暮るる母の実家        由美子
       ○祖母と手をつないでゐたり秋の雷     由美子
       ◎塩素のにおい鼻に残って残暑かな      琴美
       ○まちわびたかじかとり夏の雨に消え     琴美
       ◎かじかとりかじかとともに流れてる     筑美
       ○川の中暑さをわすれるかじかとり      筑美

  由美子選 ◎祖母の指爪より細き秋暑かな        直美
       ○雨来るか滅多矢鱈に虻飛んで        直美
       ◎塩素のにおい鼻に残って残暑かな      琴美
       ○まちわびたかじかとり夏の雨に消え     琴美
       ◎かじかとりかじかとともに流れてる     筑美
       ◎川の中暑さをわすれるかじかとり      筑美

  琴美選  ◎雨来るか滅多矢鱈に虻飛んで        直美
       ○祖母の指爪より細き秋暑かな        直美
       ◎祖母と手をつないでゐたり秋の雷     由美子
       ○雷去つて誰彼となく居間にをる      由美子
       ◎川の中暑さをわすれるかじかとり      筑美
       ○かじかとりかじかとともに流れてる     筑美

  筑美選  ◎雨来るか滅多矢鱈に虻飛んで        直美
       ○祖母の指爪より細き秋暑かな        直美
       ◎雷去つて誰彼となく居間にをる      由美子
       ○祖母と手をつないでゐたり秋の雷     由美子
       ◎まちわびたかじかとり夏の雨に消え     琴美
       ○夏過ぎてうきわしずかにただよって     琴美

    


[13日] 

 盆に入る(あした)の川の濁りゐて
 朝涼のハンガー二本並びをり
 かじか獲る足裏(あうら)の幅を広げては
 束の間の晴天秋は五日目に
 バンソーコだらけの左手(ゆんで)暁ヶ(あけ)の雷           直美

 不器用に丸き石あり川涼し
 歓声のごとく瀬音の湧く秋暑
 バランスのとれぬシーソー秋気配
 川底は静かに秋が来てゐる
 緩急をつけて銀やんまの行けり           由美子
  
 かじかとり川のにおいにむねはずみ
 猿一人たたずみたたずむ残暑かな           琴美

 あみどごし雨はふらぬか朝おきて
 年々とかじかがみえぬ残暑かな
 夏の川にごりがすごく前みえぬ            筑美


    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎不器用に丸き石あり川涼し        由美子
       ○川底は静かに秋が来てゐる        由美子
       ○かじかとり川のにおいにむねはずみ     琴美
       ◎年々とかじかがみえぬ残暑かな       筑美
       ○あみどごし雨はふらぬか朝おきて      筑美

  由美子選 ◎朝涼のハンガー二本並びをり        直美
       ○盆に入る朝の川の濁りゐて         直美
       ○かじかとり川のにおいにむねはずみ     琴美
       ◎年々とかじかがみえぬ残暑かな       筑美
       ○夏の川にごりがすごく前みえぬ       筑美

  琴美選  ◎かじか獲る足裏の幅を広げては       直美
       ○盆に入る朝の川の濁りゐて         直美
       ◎川底は静かに秋が来てゐる        由美子
       ○バランスのとれぬシーソー秋気配     由美子
       ◎年々とかじかがみえぬ残暑かな       筑美
       ○あみどごし雨はふらぬか朝おきて      筑美

  筑美選  ◎かじか獲る足裏の幅を広げては       直美
       ○バンソーコだらけの左手暁ヶの雷      直美
       ◎不器用に丸き石あり川涼し        由美子
       ○川底は静かに秋が来てゐる        由美子
       ○かじかとり川のにおいにむねはずみ     琴美


[14日] 

 初秋の轆轤(ろくろ)回せば日照雨(そばえ)来る
 横一線遠流(おんる)の島の秋雲は
 島みえて水脈に秋色(しゅうしょく)濃くなりぬ
 島秋風(しゅうふう)手花火の玉定まらず
 吾娘(あこ)十三島のバッタをつまみ上ぐ           直美

 山のごときフェリー入港して新涼
 つかず離れずかもめと走る秋の海
 新涼の轆轤の湯呑みぐにやりとす
 初秋のさざ波入日へと立てり
 いさぎよく線香花火高く持つ            由美子

 夏休みろくろまわして過ぎていく
 船の中ゆらりゆられる残暑かな
 夏の海ながめて心は一人旅
 山から雲にゅっとでて夏はいく
 風にのるかもめ夏空うるおして            琴美

 ふねにのりかもめにえさやるざんしょかな
 夏の海ほのかにゆれるふねの中
 夏やすみろくろのうえでおどるつち          筑美


    

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎初秋のさざ波入日へと立てり       由美子
       ○新涼の轆轤の湯呑みぐにやりとす     由美子
       ◎山から雲にゅっとでて夏はいく       琴美
       ○船の中ゆらりゆられる残暑かな       琴美
       ◎夏やすみろくろのうえでおどるつち     筑美
       ○ふねにのりかもめにえさやるざんしょかな  筑美

  由美子選 ◎島みえて水脈に秋色濃くなりぬ       直美
       ○横一線遠流の島の秋雲は          直美
       ◎夏休みろくろまわして過ぎていく      琴美
       ○風にのるかもめ夏空うるおして       琴美
       ◎ふねにのりかもめにえさやるざんしょかな  筑美
       ○夏やすみろくろのうえでおどるつち     筑美

  琴美選  ◎島秋風手花火の玉定まらず         直美
       ○吾娘十三島のバッタをつまみ上ぐ      直美
       ◎つかず離れずかもめと走る秋の海     由美子
       ○いさぎよく線香花火高く持つ       由美子
       ○夏の海ほのかにゆれるふねの中       筑美
       ○夏やすみろくろのうえでおどるつち     筑美

  筑美選  ◎島みえて水脈に秋色濃くなりぬ       直美
       ○初秋の轆轤回せば日照雨来る        直美
       ◎つかず離れずかもめと走る秋の海     由美子
       ○新涼の轆轤の湯呑みぐにやりとす     由美子
       ◎山から雲にゅっとでて夏はいく       琴美
       ○夏の海ながめて心は一人旅         琴美


[15日] 

 島揺する暁ヶの豪雨の哀しかり
 秋荒れて日蓮の島横断す
 世阿弥見し海へ秋雲急ぎけり
 秋驟雨順徳院の杜そこに
 さはやかに能面の髭はね上がる            直美

 コスモスの一つが咲いて雨上がる
 流罪てふ運命ついと赤とんぼ
 島へ渡る一筋の道秋の風
 終戦の日は土砂降りの佐渡ヶ島
 バンガローの灯のやんはりと終戦日         由美子

 突然の雨降りだして残暑かな
 ピンヨロととんび夏の空にいて
 赤ガニの横歩き暑さひきだして
 焼き肉のにおいただよい秋がくる
 砂浜の石のじゃりりと夏暮るる            琴美

 海がわれ二つ亀への夏の道
 すなはまに波がうちよせ足はずむ
 波おとがほのかにきえるざんしょかな         筑美


 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎バンガローの灯のやんはりと終戦日    由美子
       ○終戦の日は土砂降りの佐渡ヶ島      由美子
       ◎突然の雨降りだして残暑かな        琴美
       ○砂浜の石のじゃりりと夏暮るる       琴美
       ◎波おとがほのかにきえるざんしょかな    筑美
       ○海がわれ二つ亀への夏の道         筑美

  由美子選 ◎世阿弥見し海へ秋雲急ぎけり        直美
       ○さはやかに能面の髭はね上がる       直美
       ◎砂浜の石のじゃりりと夏暮るる       琴美
       ○赤ガニの横歩き暑さひきだして       琴美
       ◎海がわれ二つ亀への夏の道         筑美
       ○波おとがほのかにきえるざんしょかな    筑美

  琴美選  ◎島揺する暁ヶの豪雨の哀しかり       直美
       ○秋荒れて日蓮の島横断す          直美
       ◎バンガローの灯のやんはりと終戦日    由美子
       ○終戦の日は土砂降りの佐渡ヶ島      由美子
       ◎海がわれ二つ亀への夏の道         筑美
       ○波おとがほのかにきえるざんしょかな    筑美

  筑美選  ◎島揺する暁ヶの豪雨の哀しかり       直美
       ○秋荒れて日蓮の島横断す          直美
       ◎バンガローの灯のやんはりと終戦日    由美子
       ○終戦の日は土砂降りの佐渡ヶ島      由美子
       ◎波おとがほのかにきえるざんしょかな    筑美
       ○突然の雨降りだして残暑かな        琴美

 毎回、選句の後にはそれぞれの句について意見交換をしましたが、当時の記録が残っておりませんので、残念ながらその様子をお伝えすることができません。今までの家族句会の様子を参考に、ご想像いただければ幸いです。

 それではまた。
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