「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第14回

実施日 2003年8月13日〜18日 場所 新潟


 こんにちは、佐怒賀家です。
 あっという間に「立冬」も過ぎ、またまたのご無沙汰です。
 今回も句会が開けず、昔の資料を引っ張り出し、第12回でご報告しました2002年の初家族句会の翌年の夏の句会を報告させて頂きます。
 2003年の夏は、琴美は中学3年生、筑美は小学6年生でした。旅の行程は次の通りです。

 8月13日、新潟(恒例の高瀬温泉郷)へ向かって出発。到着後、親戚周りをして、午後には近くの川で鰍獲り。
 14日には、新潟市の水族館「マリンピア日本海」へ。夜は近所の盆踊に参加。
 15日は、近くで興行していた「サーカス」見物へ。
 16日・17日は、川に入ったり、近くを散策したりと、のんびり過ごし、18日に帰宅しました。

 この年も、旅行中には毎晩、計5回の句会を実施しています。

[13日] 

 桃は実に横切るだけの町過ぎて
 (かじか)続出右のサンダル脱げさうに
 鰭広げ放題鰍焼かれては            直美(通称:おとう)

 まはり込む鰍の先へ網を出す
 両足の重さ投げ出し夏惜しむ
 ここよりは急流立ち止まると秋風
 時速百キロ空片方がうろこ雲
 水音を全身で聞き秋めける          由美子(通称:ままい)

 太陽を背中にあびてかじかとり
 おにやんま背筋ビシッと青空に
 とってきたかじかジャリリと口の中
 にらめっこ川の小さな名人と          琴美(通称:ねね)

 さおにぎりいくらとぶなとカジカつる
 カジカつりもくてきカジカでもヤマメ
 川もぐりカジカ見つけた止まれない
 石かなあカジカにみえる本物だ         筑美(通称:つう)

 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎ここよりは急流立ち止まると秋風     由美子
       ○水音を全身で聞き秋めける        由美子
       ◎おにやんま背筋ビシッと青空に       琴美
       ○太陽を背中にあびてかじかとり       琴美
       ◎川もぐりカジカ見つけた止まれない      筑美
       ○さおにぎりいくらとぶなとカジカつり     筑美

  由美子選 ◎鰍続出右のサンダル脱げさうに       直美
       ○桃は実に横切るだけの町過ぎて       直美
       ◎おにやんま背筋ビシッと青空に       琴美
       ○とってきたかじかジャリリと口の中     琴美
       ◎さおにぎりいくらとぶなとカジカつり     筑美
       ○川もぐりカジカ見つけた止まれない     筑美

  琴美選  ◎鰭広げ放題鰍焼かれては          直美
       ○鰍続出右のサンダル脱げさうに       直美
       ◎両足の重さ投げ出し夏惜しむ       由美子
       ○まはり込む鰍の先へ網を出す       由美子
       ◎川もぐりカジカ見つけた止まれない     筑美
       ○さおにぎりいくらとぶなとカジカつり     筑美

 
  筑美選  ◎鰍続出右のサンダル脱げさうに       直美
       ○鰭広げ放題鰍焼かれては          直美
       ◎まはり込む鰍の先へ網を出す       由美子
       ○時速百キロ空片方がうろこ雲       由美子
       ◎にらめっこ川の小さな名人と        琴美
       ○太陽を背中にあびてかじかとり       琴美


[14日] 

 海馬(とど)のゐる水族館の赤とんぼ
 左足蹴つて踊の輪の歪
 二巡目の拍子外れて踊唄               直美

 逆立ちのマンボウどうする夏休み
 首もたげトドの憂鬱秋はじめ
 盆踊後ろの闇の深くなる               由美子

 夏休み魚を見てみるみられてみる
 盆踊父の背みつつ腕をふる
 エイの口真上に見つけ秋くるる
 トドの声空にウオーと秋まじか 
 水族館つめたいしぶきに秋感じ            琴美

 マンボウがたちおよぎしていきをすう
 水ぞく館カジカのおやぶんのったりと
 アユつりに雨がふるなかやってくる
 夏やすみでかけるだけでおおさわぎ          筑美

 
 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎逆立ちのマンボウどうする夏休み     由美子
       ○盆踊後ろの闇の深くなる         由美子
       ◎盆踊父の背みつつ腕をふる         琴美
       ○トドの声空にウオーと秋まじか       琴美
       ◎水ぞく館カジカのおやぶんのったりと    筑美
       ○マンボウがたちおよぎしていきをすう    筑美

  由美子選 ◎左足蹴つて踊の輪の歪           直美
       ○二巡目の拍子外れて踊唄          直美
       ◎トドの声空にウオーと秋まじか       琴美
       ○夏休み魚を見てみるみられてみる      琴美
       ◎アユつりに雨がふるなかやってくる     筑美
       ○マンボウがたちおよぎしていきをすう    筑美

  琴美選  ◎左足蹴つて踊の輪の歪           直美
       ○二巡目の拍子外れて踊唄          直美
       ◎逆立ちのマンボウどうする夏休み     由美子
       ○首もたげトドの憂鬱秋はじめ       由美子
       ◎水ぞく館カジカのおやぶんのったりと    筑美
       ○アユつりに雨がふるなかやってくる     筑美

  筑美選  ◎海馬のゐる水族館の赤とんぼ        直美
       ○左足蹴つて踊の輪の歪           直美  
       ◎逆立ちのマンボウどうする夏休み     由美子
       ○盆踊後ろの闇の深くなる         由美子
       ◎盆踊父の背みつつ腕をふる         琴美
       ○水族館つめたいしぶきに秋感じ       琴美


[15日] 

 ()つ国のサーカスを観る終戦日
 道化師の無言も盆の雨二日
 盆は中盤脱げば靴下丸まつて             直美

 異国のピエロ笑はれなくて終戦日
 ジャグラーの炎の(つるぎ)夏が逝く
 ホットケーキにバターのしみて夏の果
 浮輪もてあます室内プールかな            由美子
  
 風りんの音色かすかに聞こえおり 
 前泳ぐ弟の足夏休み
 パンパンと花火闇夜に消えていく
 サーカスのロープだらりと夏くるる
 初秋の天気予報は低温注意
 朝ご飯梅のすっぱさ秋はじめ
 皿に乗るもみじの茎の赤くなり            琴美

 朝食のいちじくかおりあきかんじ
 サーカスのかれいなわざみて夏わすれ
 日記書きカジカの顔を思い出す
 サーカスでかんせいひびく夏休み
 暗闇の花火の音に耳すませ              筑美


 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎ホットケーキにバターのしみて夏の果   由美子
       ○ジャグラーの炎の剣夏が逝く       由美子
       ◎サーカスのロープだらりと夏くるる     琴美
       ○前泳ぐ弟の足夏休み            琴美
       ◎日記書きカジカの顔を思い出す       筑美
       ○サーカスでかんせいひびく夏休み      筑美

  由美子選 ◎道化師の無言も盆の雨二日         直美
       ○外つ国のサーカスを観る終戦日       直美
       ◎サーカスのロープだらりと夏くるる     琴美
       ○前泳ぐ弟の足夏休み            琴美
       ◎日記書きカジカの顔を思い出す       筑美
       ○朝食のいちじくかおりあきかんじ      筑美

  琴美選  ◎道化師の無言も盆の雨二日         直美
       ○盆は中盤脱げば靴下丸まつて        直美
       ◎異国のピエロ笑はれなくて終戦日     由美子
       ○ジャグラーの炎の剣夏が逝く       由美子
       ◎日記書きカジカの顔を思い出す       筑美
       ○サーカスのかれいなわざみて夏わすれ    筑美

  筑美選  ◎外つ国のサーカスを観る終戦日       直美
       ○道化師の無言も盆の雨二日         直美
       ◎ジャグラーの炎の剣夏が逝く       由美子
       ○異国のピエロ笑はれなくて終戦日     由美子
       ◎前泳ぐ弟の足夏休み            琴美
       ○皿に乗るもみじの茎の赤くなり       琴美


[16日] 

 川上の膨れて盆の終はりけり
 川底の大石ぬめりたる残暑
 盆は大風川幅越えて川流る              直美

 パラソルかかへ見やる浅瀬も秋風裡
 泣き真似の祖母がウインクして八月
 川の音のみが事実かかじか取る
 秋めくや明るきうちに風呂に入る
 秋の川魚跳ねてよりひかり増す
 鼻のあたまの日に焼けてをり笑ひ合ふ         由美子

 弟が花火しようとせいている
 カジカとり背中こんがり日焼けかな
 川の水せきとめており夏のはて
 夏の朝弟の髪ばさらんと
 川底の石のぬるりと夏休み
 初秋のカジカの口のパクパクと
 ほうじ茶の茶葉ぽつねんと秋はじめ          琴美

 カジカいた川ぞこの砂流れてる
 日焼けしたせなかポッカリ川の外
 流れてる水といっしょに夏はゆく
 とまるとこカジカのやどは石の下           筑美


 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎秋めくや明るきうちに風呂に入る     由美子
       ○鼻のあたまの日に焼けてをり笑ひ合ふ   由美子
       ◎ほうじ茶の茶葉ぽつねんと秋はじめ     琴美
       ○夏の朝弟の髪ばさらんと          琴美
       ◎日焼けしたせなかポッカリ川の外      筑美
       ○カジカいた川ぞこの砂流れてる       筑美

  由美子選 ◎盆は大風川幅越えて川流る         直美
       ○川底の大石ぬめりたる残暑         直美
       ◎ほうじ茶の茶葉ぽつねんと秋はじめ     琴美
       ○川底の石のぬるりと夏休み         琴美
       ◎日焼けしたせなかポッカリ川の外      筑美
       ○カジカいた川ぞこの砂流れてる       筑美

  琴美選  ◎盆は大風川幅越えて川流る         直美
       ○川上の膨れて盆の終はりけり        直美
       ◎秋の川魚跳ねてよりひかり増す      由美子
       ○泣き真似の祖母がウインクして八月    由美子
       ◎カジカいた川ぞこの砂流れてる       筑美
       ○日焼けしたせなかポッカリ川の外      筑美

  筑美選  ◎盆は大風川幅越えて川流る         直美
       ○川底の大石ぬめりたる残暑         直美
       ◎川の音のみが事実かかじか取る      由美子
       ○パラソルかかへ見やる浅瀬も秋風裡    由美子
       ◎初秋のカジカの口のパクパクと       琴美
       ○川底の石のぬるりと夏休み         琴美


[17日] 

 放たれて甲虫(こうちゅう)(はす)に幹(のぼ)
 竹春(たけはる)の川音一本調子なる
 青柿の落ちて影生む日暮かな
 残る蚊に足首刺され旅終はる             直美

 大輪の百合活けられて旅の宿
 雨がちの旅の終はりの油蝉
 手花火や次々つけ次々消ゆる
 枕元に羽音大きくかぶと虫             由美子

 父が花火高いとこよりかかげおり
 強風の花火のけむりぐるぐると
 盆すぎて祖母もつスイカのしっとりと
 今日はここまで花火バケツに横たわり
 花火に蛾とつげきしている闇夜かな
 カシカシとカブト虫箱の中におり
 カブト虫闇夜にブワンと飛んでおり          琴美

 おもちゃやにいけずしてなお夏はゆく
 ふと見ればりょこうおわってぼんしゅうばん
 花火やりほんのすこしの夢の中
 川の中カジカ見つけた息をとめ
 ぼんやりとカブト虫まうでんとうで
 カブト虫光につつまれおどってる           筑美


 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎雨がちの旅の終はりの油蝉        由美子
       ○枕元に羽音大きくかぶと虫        由美子
       ◎今日はここまで花火バケツに横たわり    琴美
       ○カシカシとカブト虫箱の中におり      琴美
       ◎カブト虫光につつまれおどってる      筑美
       ○川の中カジカ見つけた息をとめ       筑美

  由美子選 ◎竹春の川音一本調子なる          直美
       ○青柿の落ちて影生む日暮かな        直美
       ◎今日はここまで花火バケツに横たわり    琴美
       ○カブト虫闇夜にブワンと飛んでおり     琴美
       ◎川の中カジカ見つけた息をとめ       筑美
       ○カブト虫光につつまれおどってる      筑美

  琴美選  ◎青柿の落ちて影生む日暮かな        直美
       ○放たれて甲虫斜に幹上る          直美
       ◎雨がちの旅の終はりの油蝉        由美子
       ○枕元に羽音大きくかぶと虫        由美子
       ◎カブト虫光につつまれおどってる      筑美
       ○おもちゃやにいけずしてなお夏はゆく    筑美

  筑美選  ◎放たれて甲虫斜に幹上る          直美
       ○青柿の落ちて影生む日暮かな        直美
       ◎雨がちの旅の終はりの油蝉        由美子
       ○枕元に羽音大きくかぶと虫        由美子
       ◎今日はここまで花火バケツに横たわり    琴美
       ○カブト虫闇夜にブワンと飛んでおり     琴美

 毎回3句以上提出ということでしたが、大人2人が悪戦苦闘しているなか、子ども達は競い合うように次々と仕上げていきました。
 選句の後にはそれぞれの句についての意見交換をしましたが、当時の記録が残っておりませんので、残念ながらその様子をお伝えすることができません。今までの家族句会の様子を参考に、ご想像いただければ幸いです。
 なおどうしたわけか、今回分の写真がどうやっても見つかりませんでした。我が家では翌2004年よりデジカメが導入されましたので、その狭間で紛失してしまったのかもしれません。ということで、今回は写真なしということで、申し訳ありませんがお許し下さい。


 それではまた。




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