火の歳時記

NO82 平成2191


片山由美子

 
  【火の俳句】第3回 秋の俳句から


  木歩忌の焼味噌少し酒少し        淵脇 護
  木歩忌の燃えつきて雲むらさきに     片山由美子
  仏壇に酒場のマッチ夢二の忌       後藤青峙

  九月一日は富田木歩、竹下夢二の忌日

  もしほやくけむりひとすぢ迢空忌     伊達雅和
  火を見つめ酒飲む癖や迢空忌       七田谷まりうす

  九月三日は釈迢空の忌日。

  船室に降りこむ火山灰や鳳作忌      布施伊夜子
  九月十七日は篠原鳳作の忌日。以下、アトランダムに。

  噴煙はゆるく秋雲すみやかに       橋本鶏二
  噴煙の立ちはだかれる良夜かな      森重 昭
  火を焚けば火のうつくしき無月かな    瓜生純夫
  われの星燃えてをるなり星月夜      高浜虚子
  星ひとつ命燃えつつ流れけり         同
  へつつひの火のたらたらと雁渡し     黛  執
  秋雨やともしびうつる膝頭          一茶
  旅十日家の恋しく火恋し         勝又一透
  火が恋し窓に樹海の迫る夜は       大島民郎
  身ほとりの片付きてより火の恋し     武田澄江
  菊生けてめでたき風呂の名残かな       蓑虫
  一杓に湯気の白さよ風呂名残       井沢正江
  淋しさにまた銅鑼うつや鹿火屋守     原 石鼎
  月落ちて鈴鹿の闇に鹿火ひとつ      下田 稔
  焚きそめて火柱なせる鹿火にあふ     皆吉爽雨
  籾焼いて彦根城下を煙らしぬ      後藤比奈夫
  行暮れて利根の芦火にあひにけり    水原秋桜子
  蘆の火の美しければ手をかざす     有働木母寺
  湖の中州のくらき蘆火かな        長谷川櫂

   

  前回の吉田火祭の句を追加しておく。
  火祭や山水闇にほとばしり        富安風生
  火祭の夜空に富士の大いさよ       伊藤柏翠
  火祭の闇にひそみて火伏せ役       井沢正江
  火祭に立ちはだかりて太郎杉       堀口星眠
  山仕舞ふ火祭の火をうちかぶり     福田甲子雄
  火祭にはぐれて前もうしろも火      須賀一恵
  火伏祭の一の火つきし鳥居前      肥田野勝美





   
 
 (c)yumiko katayama

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