感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第52回 2010/11/30   


  原 句  藪巻を終へしばかりの猫車
 
 「藪巻(やぶまき)」は「菰巻(こもまき)」とも言って、樹木や竹の雪折れを防ぐために筵を巻きつけることを言い、冬の季語になっています。庭園などで立派な松の幹や大枝に新しい菰が縄できりりと巻かれている情景は美しく、雪のあまり降らない地域では、装飾としての藪巻なのでしょう。
 この句も都内の小さな庭園での景を詠んでいます。初冬、植木職人さんが丁寧に菰を巻いていました。そのかたわらに菰を積んできた猫車(運搬用の一輪車)が置いてあり、もうからっぽになっていました。生き生きとした感じがあっていい句だと思いました。猫車の登場が新鮮です。
 ところが少し気になったのは、この句では読者の目に最後に残るのが猫車のアップだということ。なぜそうなったかというと、「終へしばかりの」という描写に読者の想像力が働き、あれこれ想像して頭にとどまるからです。
 作者はもしかしたら、美しく藪巻されたばかりの松を見せたかったのではないかと考えました。

  添削例1  藪巻に寄せてありたる猫車

 こうしてみると、藪巻の作業が終わり、まだ片付け終わっていない庭園の様子が広々と一望できるのではないでしょうか。「藪巻」だけで、藪巻された松などの樹木の姿は見えてきます。

  添削例2  藪巻を丹念に終へぺたぺたと
 
 この句にも職人さんの愛情ある仕事ぶりがうかがえます。巻き終えて「よしよし」というように幹をぺたぺたと叩いたのでしょう。主語と動詞「叩く」を省略してしっかりと詠んでいますが、むしろ「丹念に」が饒舌かとも思います。「ぺたぺたと」は一見無造作な擬音ですが、ここは活かしたいと思います。

  添削例3  藪巻を終へたる幹をぺたぺたと




 水平線

(c)kyouko ishida
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